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修理修理

諦めなければ良いこともあります

電池式の時計は寿命があるなんて言われますが半分正解で半分不正解。
もちろん状態次第で修理ができないこともありますが、
古い電池式の時計もオーバーホールをすれば使えることもあります。

時計は機械式でも電池式でもオーバーホールは必要。
メーカー修理になると安価な電池式のムーヴメントをいちいち分解洗浄しているとコストが掛かるので、
そっくり中の機械を入れ替えます。
それは一部の機械式も同様。
そうした方が早くて安い…牛丼じゃないですよ。
しかしウチみたいな時計屋はメーカーに修理依頼しないと機械を新品にできません。
なので手間を掛けてでもオーバーホールをします。

電池式も機械式同様に機械油があり、
それが切れると電池交換をしても遅れたり動かなかったりします。
遅れるから電池交換をすれば直るというのは間違いで、
一時的に時間は合っていても後々には時間がずれているものです。

さらに電池式の厄介なところは電池が当然入っています。
そして電池の中には液体が入っているので、
止まったままの電池を放置していると漏液しやすく、
特に夏場など部屋や押し入れなどが高温になる場所は漏液しやすい環境と言えます。
劣悪な保存状況などによって漏液してしまうと…
ムーヴメントの心臓部分でもある電子回路をダメにしてしまい、
本来は電池交換やオーバーホールで直った時計が修復不可能となることがあります。



よく見ると電池を入れるスペースの横にサビのようなものがありますね。
これが漏液した後しばらく放置された状態。

これがメーカー修理を受けてもらえる時計なら最悪の場合、
高い修理代を払ってでも機械を入れ替えれば直すことができます。
しかしメーカー修理ができない場合やパーツが入手できない場合は修理不可となり、
その時計を直すとしたら他の個体から機械を移植するしかありません。
つまり時計1本買うくらいの金額はかかります。

さらに電池式の腕時計では「オーバーホールをしても直らない」こともあります。
機械式と原理が違う動作をする電池式の腕時計は、
歯車があって機械油があるという部分は機械式とほとんど同じですが動力源が電池である、
ここまでは何となくわかると思いますが、
機械と電池をつなぐ「電子回路」が実は一番重要な存在。

歯車をどんなに磨いて油を差して電池を新品にしても、
電子回路の電通が悪ければ時計は動きません。
これは長年使用されたコイルは経年劣化や湿気などによっていずれ壊れます。
ここの部分だけでも修復ができればいいのでしょうが、
職人さんの工賃を考えると割に合わない。
さらに古い電池式の時計は回路が手に入らず修理ができないこともあり、
過去に数回は修理ができずに返却したこともあります。
こればかりは開けて回路があるかどうか調べないといけないので、
実は時間と手間がかかる大変な作業なんです。

そこで今回依頼されたタグホイヤーの30年くらい昔のレディース時計。




電池交換をしても動かなくてどこに持って行っても直らないと断られたそう。
そこで職人に修理を依頼して原因調査から。
先ずはオーバーホールを行い正常に動くかどうかの確認。
しかし時間が合わないので回路を調べると…やはり回路の不良。
ここですぐに交換するのではなく、
一度回路の電通をよくするためにコイル周りを磨きます。
それでもダメなら初めて交換となるのですが見ての通り回路の交換をされました。
つまり今回はオーバーホールと回路交換。

金額はオーバーホール¥15,000+tax、回路は¥5,000+taxでした。
今回は思いの外パーツ代が安かったのですが、
物によっては回路だけで20,000円弱するものもあるので時計によって修理代は変わります。
もちろん全ての電池式の時計を直せるわけではないので、
一度お預かりして修理ができるかどうか時間をかけて調べる必要があります。

ちなみに世間では電池式の時計は安価だのチープだの好き放題言われる存在ですが、
この便利な機械を製造するまでのコストや、
その後のメンテナンスの職人さんの費用などを考えたときに果たして割の合うのかどうか?
特に修理でここまでやって20,000円ほどで直せたのですが、
この金額ってどうですか?
個人的にはここまで手間暇かけてこの金額なら安いと思うのです。

時計と言うのは本当に多くの人たちの知恵やアイデア、
そして多大なる苦労があってこそ身近な存在になり得たもの。
そういった話を知ると自分の腕時計にも愛着が沸いてきませんか?

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