ORIENTORIENT
「ちょっと」くらいがいい
先日、サントスをバラしていたらあることに気付きました。
この2つはサントスガルベから取り出した機械。
パッと見た感じは分かりにくいですが、
ローターの刻印や機械板にコート・ド・ジュネーヴ(ジュネーブ彫り)を施した機械とそうでないもの、
取り出さないと気付かなかったのですが一律一緒というわけではないようですね。
だから何なんだって話ですが、
ETAの機械はジュネーヴ彫りをしたものとそうでないものが同じ機械でもあったりなかったりを何度か確認しましたが、
80年代後半ごろから普及し始めるバックスケルトンにはジュネーヴ彫りを施した機械が多く使われている気がします。
当時はそこまで気にされるディティールではなく、
裏スケかどうかくらいしか注目されていませんでしたが、
よく見れば違うね~くらいの感覚が好きでした。
今は裏スケがデフォルト?というくらい増え、
これでもかというくらい機械に装飾しているものがありますね。
どうせ腕に身に着けたら見えないのに、
変なところにお金かけすぎ?と思えてきます。
話を戻すと、
80年代はETAのムーヴメントの普及率が相当高かったらしく、
記憶が定かではないのですが誌面で読んだときに、
スイス製の約80%の機械はETAのものと書かれていた気がします。
つまりスイス製では各ブランドの自社製ムーヴメントは20%も無かったということ。
今はどうでしょう?
一応、自社と謳っているメーカーが多いので半々くらいなのかもしれませんが、
ETAの機械の製造力がハンパではないということですね。
それだけムーヴメントを製造していればジュネーヴ彫りをしたものとそうでないものが入り混じるのは十分に考えられ、
組み立てのときもいちいち気にしてられなかったのかもしれません。
もしかしたら何かしらの基準はあったにしても、
裏スケではない機械に彫入れても…誰も見れんよ(笑)
でもまぁそういう見えないところにちょっとした小細工なんかしている所が「粋」というか、
「どーだ!すげーだろ‼」的なドヤ感がないのはいいですね。
やはりさり気なくっていうのがポイント。
ただ世の中にはわけのわからない物が存在するわけで、
裏蓋で隠れて見えないのにこれでもかというくらい装飾している機械もあるんです。
世界で2ブランドだけが制作されたと言われる100石ムーヴメント。
その一つがオリエントのグランプリ100。
何というか…無駄なのよ確かに。
だけどこれにチャレンジしたところはスゴイ。
実際に機能していない石を敷き詰めてこれでもかというくらい装飾したらこうなる。
何でしょうね~、今じゃ絶対に誰もやらないこと、
もちろん当時もどこもやらないことをやるのがオリエント。
そんなところが愛らしくて堪らない。
時計の面白さを語る時にこんな時計出されたら「本気の人」としか思えない。
どこぞのブランドだ、いくらしただ、誰々が身に着けているだ、
そんなことがチンケに思えるような時計。
そんなものが50年前の日本に存在したとなると…ちょっと嬉しい。
もしこの時計に興味を持ち始めたら…
沼への第一歩ですよ(笑)