先日お預かりしたグランドセイコーのクォーツモデルのムーヴメント。
時計は90年代のものですがムーヴメントの設計は80年代頃から。
こちらはクレドールなどにも使われている薄型クォーツムーヴメントで、
ムーヴメントにカバーを被せて裏蓋を閉めるという、
セイコーのクォーツ時計全般に見られる構造です。
このカバーをズラして裏蓋を閉めてしまうと、
カバーの先端でコイルを切ってしまうことがあり電池交換の際は注意が必要です。
今回の修理もコイルを切られていたので、
オーバーホールを行う際にコイルの交換も行いました。
こちらのムーヴメントも少し前のものとなるので、
コイルや回路などのパーツは入手が難しくなりつつあります。
幸いなことに弊社とお付き合いくださる業者さんがセイコーの代理店なので、
一先ずはパーツを手配してくださったので今回の修理が完了しました。
さて表題通りクォーツ時計には「価値が無い」という自称・時計好きの方は、
どれほど時計のことを理解されているのでしょうか?
まさか機械式であれば何でもかんでも手間暇が掛かっているなんて思っていませんよね?
腕時計は手巻き式から始まり、
手首を振ることでローターが回転しゼンマイを巻き上げる自動巻きへ、
そして電池(この際は音叉も合わせて)で動作する電池式へ進化しています。
電池式の腕時計が誕生してすぐは非常に高価なものでしたが、
量産することに成功し今では世界中で使われるようになったのですが、
それまでの道のりは非常に遠かった。
詳しい内容はぜひ調べて頂くとして、
クォーツ時計もこのグランドセイコーのように薄くすることは簡単ではなく、
何より作ったムーヴメントが世界中の職人さんに「直せる」ようにしていることなど、
ただ動けばいいという問題ではありません。
とは言え昨今は量産して売り切れればいい風潮もあり、
上記のように機械式ムーヴメントが妙に神聖なものと思っている方の裏をかくように、
ETAのコピームーヴメントを使用した機械を載せた高級腕時計もあり、
大層な広告を打ってさも凄いかのように書き連ねても、
実は某ムーヴメントベースで全然自社開発ではないということもあります。
この時計のように「裏蓋を空けてみないと分からない」ということですね。
個人的には機械式であっても電池式であっても双方に良し悪しがあるし、
時計の所有者が気に入っていれば良いのでは?と思います。
電池式でないと販売されていない時計もあるので一概に機械式が良いとは思いません。
やはり一番は「デザイン」を気に入って愛着を持つこと。
今回は
オーバーホール¥16,500
コイル交換¥11,000
合計¥27,500
これでまた永く使えますね!
これからも一層の愛着を持って大切に使ってもらえたら嬉しいです。