本日の入荷で気になった方もいるはず。
何だか「違和感」を覚える右側のマストタンク。
そう、文字盤の色が「シャンパン」なんです‼
比較のために左・アイボリーローマと並べて撮りましたが、
明らかに文字盤の色が濃い!
ちなみにコレは書き換えでもなければカスタム品でもない、
カルティエで文字盤交換をした正真正銘の「オリジナル」パーツなんです‼
事の経緯は…
ウチでも何度か販売したことのある「Cartier」と筆記体でプリントされたマストタンク。
ホワイトをベースとしたブラック印字のローマ数字のマストタンクですが、
1970年代にアメリカ市場のみで販売されたとされ、
マストタンクがコレクションになる頃には販売が終了されたとみられ、
その後は同じ書体のマストタンクは無いはずでした。
上記のマストタンクの場合は必ず「手巻き」のムーヴメントなのですが、
ある日、
とある有名店で「must de」表記の無い筆記体ロゴのマストタンクを販売していました。
その時は「あ~、手巻きのかな?」と思っていましたが何やら文字盤の色が薄いブラウン。
気になって見てみると何と「クォーツ」でした。
自分の持っている情報で筆記体ロゴのクォーツは存在しないはず。
とは言えそのお店もそれなりに有名で知識もあるお店なので変なものは売らないはず。
でも正直なところ少しだけ疑っていた部分もあったのですが、
ある日、クォーツの筆記体ロゴのマストタンクが出てきたとのことで、
とりあえず仕入れてみました。
その後、商品が届いてみてみると、
どう見ても書き換えではない。
だからと言って見た事がない代物なので一先ずカルティエで修理依頼。
もし書き換えやカスタムパーツの文字盤であれば修理が通らないはず。
2週間後、見積もりが届いてみると、
「文字盤交換後、表記が変更されます」
ちょっと待てと。
表記の変更どうのこうのより、
文字盤交換をするということは筆記体ロゴのクォーツは存在するということ⁉
しかも見積書の商品名にちゃんと「TANK VERM SM CHAMPAGNE」って書いてある‼
シャンパンってなんだよ???
マジかよ~~~~‼
と、ひとり絶叫しました(笑)
筆記体ロゴで無くなる理由は、
恐らく「must de」がカルティエのコレクションとして今のカルティエが表記するようにした、
筆記体ロゴ自体にカルティエ以外が商標を持っている、
あるいは筆記体ロゴのマストタンクは、
当時のカルティエニューヨーク(当時は別会社だったそう)が勝手に製造したから、
などなど色々な理由が考えられます。
とりあえず文字盤交換をしないでおこうとも考えましたが、
交換後にどんな文字盤になるのかがその時にわからなかったので、
今回は文字盤交換を含めバキバキに修理しました。
今回のマストタンクでは何より文字盤のカラーで「シャンパン」が存在したこと。
アイボリーでも個体差で薄いものや濃いものがありますが、
その日ではないくらいブラウンに近い色味。
時計業界で約20年いますが、
このマストタンクは正直初めて見ました。
ヴィンテージウォッチはほとんどの情報が出ているものだと思われがちですが、
自分でも年に何回かは新しい情報を得たりします。
今回のマストタンクに至っては驚き以外の何物でもなく、
この個体は世界中でウチくらいしか持っていないと自負もしています。
それは大げさではなくて、
ヴィンテージの面白さの一つとして自分自身が興味を持ち、
マストタンクを徹底的に掘り下げてきた結果だと思っています。
今回のマストタンクは販売していますが、
これは本当に資料的価値が高く、
今後の入手はほぼ不可能だと思われます。
それでも販売していいのは自分たちが保有していても、
もうこれ以上の価値は見出せないからです。
だからこの時計を気に入って使ってくださる方に譲りたい。
少なくともウチのお店でこんなに珍しいマストタンクが入荷したという事実があれば良いんです。
この時計に興味を持たれた方は本当に早めに連絡ください。
次回のお約束が「絶対」できない時計です。
ヴィンテージ品の面白さを究めた個体と言っても過言ではない。
それほど自信のある時計ですので、
ドシドシお問い合わせくださいね‼