セイコーの最高級モデルと言えばグランドセイコーですが、
そのグランドセイコーが誕生したのが1960年に諏訪工場でのこと。
一方で翌年に亀戸工場から誕生したキングセイコー。
1960年代は日本国内だけでなく、セイコー社内でも歴史の転換期を迎えます。

1961年に誕生したキングセイコーはクロノスをベースに、
そしてグランドセイコーを超える100ミクロンの14金張りを施したケースが特徴。
デザインは丸みのあるグランドセイコーに対してエッジのあるシャープなものに。
同じように見えて対極にある存在であるのと同時に、
それぞれの工場から対抗するような高級機種が誕生しました。
グランドセイコーのイメージは腕時計の本質的なものを捉えた「究極の普通」と言える時計。
対してキングセイコーは非常に攻めたアイデアを時計にしたような、
海外製品を意識した時計が多いイメージです。
国産で言えばシチズンの対抗馬のような存在とも言えそうです。
ファーストモデルは比較的ベーシックですが少し武骨で、男性らしい雰囲気が漂うキングセイコー。

グランドセイコーのような少し柔らかな表情とは違い、
違った解釈のある高級品という雰囲気を感じます。
これが数年経つとユニークなデザインやカラフルな文字盤など、
面白さも感じられる時計がラインナップされるのもキングセイコー。
グランドセイコーは王道を突き進むようなものが多いので、
同じブランドでもモデルによって差別化を図ったことが伺えます。

ライオンメダリオンのグランドセイコー。
それに対して盾をモチーフにしたのがキングセイコー。
中央に彫り込まれた王冠のマークが「キング」の証ということが伝わります。
2022年にセカンドモデルの復刻がなされたことでキングセイコーの名前も馴染んできましたが、
それまでは「キングセイコーって何?」とよく聞かれました。
というのも1980年代にはグランドセイコーと統合されるため、その幕を閉じることとなりますが、
時計が好きな方たちの間ではグランドセイコー以上にファンが多いブランドでもあります。
その記念すべきファーストモデルは舶来時計にも無い独特なものを感じられます。
日本製の腕時計が奥深く面白いものだと思っていただける銘品として、
ぜひキングセイコーをお勧めしたと思います。
