「無名」という美学もあるのです。

「無名」という美学もあるのです。

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6月に築地事務所へ行ったときに、

行きつけの居酒屋で久しぶりの友人と偶然に再会。

その友人は世界トップクラスのジュエリーブランドの職人さん。

世界中から送られてくるジュエリーの修理を長年行っているので、

会う度に色々なことを教えてくれるので勉強になります。

 

その職人に最近の動向を聞くと、

修理の以来がコロナが落ち着いてから増えているそうで、

最近は宝石に使う石の研磨以外に「ラッカー塗装」の研磨もやるとか。

 

多分ほとんどの方は何のことか分からないと思いますが、

某有名ブランドのある動物をモチーフにしたジュエリーに使われている黒い塗装部分。

今までそこはただの塗装だけだと思ったら、

厚塗りした後に光の加減が一定になるように研磨をするのだとか…

そういう細かい仕上げをしているからあんなに高価なのだと知りました。

 

その職人は自身でも作品を作ったりするのですが、

「ブランドのものはデザインが決まっているから仕事は楽だけど、

自分のものは自由にデザインできる分、アイデアがなかなか出てこない」。

 

技術で言えば世界有数でも、

デザインという「制約」があるのと無いのとでは全然違うそう。

だからこそブランドではないものほど面白みもあるのだとか。

 

何となく言いたいことは分かってしまうのですが、

時計もブランド名が入るとそれだけで賞賛されがちですが、

そこには「ブランド力」も加わるのである意味、

無条件で良いとされる傾向にある気がします。

逆に聞いたことも無いブランドの方が時計もジュエリーも本質を評価しやすい。

 

無名ブランドだと単純にデザインの良し悪しは個人で決めることだし、

時計の場合は機械も含めて全てを評価できるので、

他人の評価ではなく自分が本当に気に入れば買えば良いし、

自分の感覚と知識で全ての判断ができる「美学」のようなものもあるのです。

 

何となく感覚としては大昔の古着を選ぶことに近い気がしますが、

先日お預かりした修理で初めて見たこの時計も「無名の美学」がある時計でした。

よく見るレディースウォッチと思いきや、

手の込んだ文字盤のサンレイ仕上げや視認性を考えられたインデックスのサイズ、

そして贅沢なプラチナ製のケース。

ムーヴメントはスイスETA社製のクォーツムーヴメント。

 

恐らく安価な時計ではないものの、

これは時計としての本質を捉えた絶妙なデザインです。

個人的にめちゃくちゃ好みの時計。

あまり聞いたことのないメーカーですが、

実は超有名だったらスミマセン(笑)

 

女性用の時計は何気に男性用以上にデザインや素材の幅が広いので、

有名無名で言えば無制限と言えるほど存在します。

ただ時計は「時間をするためのツール」であることが第一前提と考えると、

余計な装飾は無く至極シンプルで、

プラチナ製などのオーナーにしか分からない素材の贅沢さがカッコいい気がします。

 

先のジュエリー職人にこの写真を見せるとテンション爆上がり。

有名であることの安心感もありますが、

無名なものならではの面白さもあります。

 

いつの日か自分用に時計をオーダーできるなら、

プラチナorホワイトゴールドで手巻きのオールドムーヴメント、

薄型でとにかく無駄の無いシンプルなものが作りたいな~。

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