「Re-pair(リペア=修理)」で想うこと。

「Re-pair(リペア=修理)」で想うこと。

先日ご依頼いただきましたカルティエ・パシャCのベルトネジの取り付け。

ブレスレット仕様とは違い革ベルト仕様のパシャCは、

革ベルトに力が加わり時計とベルトが左右に振れ、

その力がベルトを留めているネジに伝わり外れることがあります。

 

原因の一つに当時のパシャCのベルトネジはネジ山のひっかかりが短く、

構造上、あまり強い接着剤などが使えないことなどもあって、

時々ですがこういった修理依頼もあります。

 

私共では当店でご購入頂いた時計に限り、

パーツをストックしてあれば特に料金は頂かずネジの取り付けをします。

パーツが無い場合は社外品などで取り付けられるものをお客様にご紹介しますし、

その際はパーツ代の実費分は請求しますが工賃はかかりません。

その他の費用としてはいずれの場合も往復の送料のご負担をお客様にお願いしております。

 

こういった対応につきましては自分が知る限りですが、

ほとんどのお店ではやりません。

少なくとも自分が勤めていた会社ではしません。

 

というのも外装の修理はメーカーも含めどんな理由でも基本は有料。

あくまでも使用しているユーザーの責任という扱いになりますので、

いかなる場合も有料で修理をされる店舗様の方が多いはず。

 

ストックパーツを無料で取り付ける、

社外とは言えパーツを調達して実費分しか請求しない、

これらは時計店にとって売り上げにならないし、

工賃を稼がなければ利益になりません。

なので多くのお店では有料で対応か、

メーカーなどに修理依頼をして仲介手数料を含め請求する。

 

というのがかつての個人店の在り方だったと思います。

ではなぜ私共でご購入頂いた時計の修理は無料でやるのか?

 

先に書いておくと何でもかんでも無料ではありません。

場合によっては修理代を請求することもありますが、

その際は事前にお知らせしております。

 

話を戻しますと「時計を買う」という行為は当然ですが自分が稼いだお金と、

同時に「時計を探す」という時間と労力も必要です。

さらに「お店を選ぶ」という最終段階を経て時計を購入されると思うのですが、

その時間がワクワクして楽しくもあり、

分からないこともあってソワソワと不安だったりもします。

 

そんな複合的な要素があって最終的にお客様と時計が出会うのですが、

その橋渡し的な役割が自分たちのような「お店」です。

 

その後、物である以上は使っていれば故障などのトラブルもあることでしょう。

これは仕方がないとして、

そこでしっかりとした対応ができるか?できないか?

ここも大きなポイントだと思います。

 

自分たちが開業するときに不明瞭なことを可能な限りクリアにするのもお店の役割だと考え、

販売した時計や預かった修理に関してはしっかりと対応するように努めてきました。

 

そして販売する時計とお客様は「pair=一緒」になれるよう販売をして、

修理の際は使えるように「re=再び」直して戻す、

つまり再び一緒になれるように「Re-pair(リペア)」するのです。

 

なのでちょっとしたパーツ代などを無料にするのは大きな理由は無く、

多大な時間と労力を使ってくださり私共を選んでいただいたお客様のために、

自分たちができる可能な限りのことをして、

再び時計を愛用していただけることを願っているからです。

そんなことを想いながら作業をしています。

 

お店である以上は売り上げも大事ですが、

それ以上にお客様にとって満足してくださることも大事なのです。

 

ちなみにRepairの語呂は自分で考えたので間違っていたらすみません(笑)