私たちが扱う商品は全てオーバーホールを行っているのですが、
その時に消耗パーツの交換は当然のようにあります。
特に機械式の「ゼンマイ」交換はブランド問わず多い。
機械によってはパーツを作っていなかったりするので、
他の機械から流用したりもします。
でも時にパーツの材料屋さんでは探しているパーツをストックしていることもあり、
そんな時に思わぬこぼれ話を聞くことがあります…
「セイコーの45系のゼンマイはスイス製」
これはここ最近で一番驚いた話です。
ゼンマイというのは電池式の時計で言えば電池に当たる、
最も稼働するパーツのため消耗も激しい。
特にハイビートと呼ばれる高回転ムーヴメントのゼンマイは、
大体10年に1回は交換が必要なことが多い。
運良くその場では交換が必要無いとしても、
いずれは交換しないといけないパーツなのですが、
その時にパーツが無いことやパーツが手配できないこと、
他のムーヴメントを手配してもゼンマイが使えないなど、
様々な理由があったりします。
特にセイコー45系のムーヴと言えば、
45GS、45KSなどの手巻きハイビートムーヴメント。
先駆けてハイビートムーヴメントを実用品にした名作中の名作。
この機械はゼンマイはもちろんのこと、
香箱と言われるパーツも摩耗が激しく、
ゼンマイが切れたときの反動で歯車を傷めることもあり、
実は厄介な時計だったりもします。
そこで先日販売した45GSの修理の際に、
材料屋さんからそんな話を聞いて、
「日本の自社生産なのにゼンマイはスイス製だなんて初めて知った」
なんて話を職人さんとしていました。
てっきり全パーツ日本製だと思っていましたが、
当時のハイビート化が如何に大変だったのか、
そして日本だけでなくスイスでもハイビートのムーヴメントの製造に、
一役買っていたということが伺えます。
古い時計はすでに販売が終了され、
何年も何十年も経過しているにも関わらず、
知らないことが毎年のように出てきます。
こうやって知らなかった情報を、
ありとあらゆる方面から教えて頂き発信していくことで、
多くの方々へ届けられるのも、
こういった「ヴィンテージ品」を扱う面白さかもしれません。
ちなみに今回入手したパーツはセイコーのロゴは入っていませんが、
製造工場は一緒のところから仕入れているそう。
でもこのパーツも今ではほとんど製造していないそうで、
残っている在庫をまとめ買いしました。
値段は…セイコー用なのにロレックスよりも高い!
それでも手に入れておく理由は単純で、
過去に販売したお客様のためにこういうパーツはストックしておくのです。
いざという時にパーツがありませんじゃお客様が困りますからね。
というわけで今回はちょっとした驚きのお話。
もしかしたら知っている人は知っているのかもしれませんが、
その時はこのお話をそっと胸にしまっておいてくださいね!