本当に「機械式」の時計は優れているのか?

本当に「機械式」の時計は優れているのか?

長年時計屋をやっていると「電池式の時計は使い捨てで価値がない」なんて言葉をよく耳にします。

昨日のブログの続きではありませんが、

正直なところ「な~に言ってんだか」と思っています。

 

あまりマニアックなことを書き出したら終わらないのでサラッと書くと、

時計によって機械式しか選べない、電池式しか選べないという事実はあります。

例えばロレックス・デイトナは機械式のみで手巻きから自動巻きへと変わりますが、

機械が変わるのと同時に時計そのもののデザインや防水性能などの機能も変わります。

もしクォーツのデイトナがあれば…そりゃニセモノです(笑)

 

例えば機械式でもトゥールビヨンやパーペチュアルカレンダーなどの「超複雑機構」の時計なら、

人知を超えた言わば「芸術品」のような扱いでもいいと思いますが、

その分プライスは…片腕に家があるようなもの。

一般的に買える50万円前後から500万円くらいの高価な時計のほとんどは同じような中身。

例えば自動巻き3針ステンレス製の時計をコンビ素材、金無垢素材、宝石付きなど、

外装の素材を変えれば値段も必然に上がりますが中身は変わらない。

 

一方、最初の電池式時計は50年代ごろに開発されたとされますが、

当時は機械式の比ではないくらい高価なもの。

エルビス・プレスリーのベンチュラは当時の価格で数百万円したとされるので、

その値段が以下に高く一般的ではないのかが伺えます。

 

その後、60年代には日本でも電池式の時計の開発が進み、

80年代には世界中で電池式の時計が普及され機械式の時計は衰退します。

その後、機械式腕時計のブームがやってきますが、

電池式の開発期間も決して短いわけではありません。

 

メンテナンスについては機械式はオーバーホールをすれば完全に直るものだと思われそうですが、

ただ油を差せばいいわけではなく内部の状態によっては修理も代替もできないことがあります。

昨日のオメガのような電池式も最終的には回路がなければ直せないので、

それぞれに似たようなところもありますが、

機械式は決して「永遠ではない」ということですね。

 

それぞれのメリット、デメリットを挙げると、

・機械式は自分で操作をする必要があるがそこが楽しくもある。

・電池式は電池が切れるまで動くけど操作の必要がほとんどないので少し味気ない。

・機械式は日差(時間のズレ)があるが電池式は殆ど狂わない。

後は時計の「デザイン」で選ぶくらい。

でもここが一番重要で自分が気に入らないと時計に愛着は持てません。

その時に選んだ時計が機械式なのか電池式なのかの違いで、

最終的には愛着を持って使いちゃんとメンテナンスをする。

 

ただ一部「例外」もあって当店でも大人気のカルティエ・マストタンクであれば、

手巻きの機械式と電池式のものが選べます。

ただし文字盤のデザインによっては両方選べますが、

殆どの場合は手巻きのみの文字盤のデザインか、

電池式のみのデザインかとなるので、

全て両方を販売しているわけではありません。

 

両方選べるのは一番人気のアイボリーローマと、

インデックスの無いものだけ。

でもインデックスの無いデザインのマストタンクは大半が手巻き。

アイボリーローマがマストタンクの誕生から生産終了まで「定番」としてあり続けたのは、

アイコニックなデザインと共にその名の通り「持たなければならない」時計だからかもしれません。

 

この時計も手巻き、電池式ともにそれぞれの良さがあるので、

どちらが良い悪いというのはありません。

ただヴィンテージ品の基本ですが、

「コンディションで選ぶ」というところは間違われないように。